社長ブログケヤキの木の下で
2024年9月23日
建築文化
- おはようございます、紙太材木店の田原です。
快晴です。
気温も20度を切ると湿度が高くても、
気持ちのいい朝になります。
子供の頃はお盆を過ぎるとこんな朝になってましたから、
夏がひと月伸びた感じです。
- 先日、鵜沼山崎町の家に5年点検に行ってきました。
外観はモルタルを塗った塗り壁
そこに吹付がしてあります。
日射の関係で白く見えますが、淡いベージュの外壁です。
住まいの外観
つまり、外壁をどのような素材で仕上げるかで、
住まいのイメージはかなり違ったものになります。
紙太材木店では
最近は杉板とガルバリウムがメイン。
二つを組み合わせる場合もありますが、
写真のような全面モルタル+吹付は、この家が最後です。
この家の前後に建てた家では、
1階と2階を分けて
1階がモルタル+吹付
2階が杉板のケースもあります。
モルタルを塗って
その上に漆喰を塗ることもありますが、
総じて金額の差から
塗り壁から杉板やガルバに移行しているように感じます。
- 建築家の伊礼さんのソトン壁の外観は
とても惹かれるものがありますから
希望される方もありますが、
全面ソトン壁となるとそれなりの金額がかかります。
- 塗り壁が敬遠されるもう一つの理由は、
施工側である工務店の事情もあります。
それは外壁の通気層の確保です。
外壁は耐力壁に面材を使うことが主流です。
通気層はこの面材に垂木や胴縁を縦に取付けて、
空気の通り道を作って確保されます。
そして、その外側に塗り壁の下地になる貫を取りつけます。
そして、防水紙を張りますが、
それだけでは柔らかい水を含んだ
塗り壁を塗った時に落ちてしまいますから
金網を防水紙の上に張ります。
この金網をラスと言います。
ラスはラス屋さんと言って専門の職人さんがいます。
面材の上に胴縁や垂木を取り付けて
ガルバや杉板を張ることに比べると、
塗り壁の工程が何段か複雑になることが分かります。
もちろん、工期もその分長くなります。
- 上記のような理由もありますが、
もう一つの理由は左官職人さんの減少です。
モルタルのようなゲル状のものを
平滑に塗るには何年もの経験年数が必要です。
コテムラと言いますが、
このムラが出ないように塗るのが - 素人では至難の技なんですね。
その職人さんが高齢化して廃業。
依頼する左官屋さんがいくら探してもいない。
- 一昔前まで住宅の外壁はモルタルが主流でしたが、
今ではサイディングが主流。
和室も絶滅状態ですから
和室の壁を塗るということもありません。
住宅の中で左官屋さんの仕事自体が
無くなっているんですね。
住宅業界も
住まい手も
手間をかけず、
いかに安く、
いかに早くを追い求めた結果とも言えます。
耐久性や性能と言った質は二の次になりがちで、
その究極の姿が800万戸の家余りとも言えます。
- 紙太材木店の社屋になる建物は
大正2年(1913年)に建てられてますから
110年ほど経っています。
外壁は漆喰、
戦争中に白い漆喰を炭で黒くしたくらいで
なにもしていませんが、なんの問題もありません。
さて、110年ノーメンテナンスは
オーバースペックでしょうか?
だから漆喰にしようと言ってるわけではありません。
この100年で - 特に戦後の日本の建築は得るものもありましたが、
それ以上に何かを失ってきたように感じます。
効率や生産性が行き過ぎれば
耐久性や性能だけでなく
建築文化も衰退していきます。
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